ドローン仏

来迎とは

浄土への往生を願う人の臨終に際し、西方極楽浄土から阿弥陀如来が諸菩薩を従え紫雲に乗ってお迎えに来てくれることを来迎といいます。浄土信仰が盛んになった平安中期以降、数多くの阿弥陀来迎図が描かれてきました。この阿弥陀来迎を立体の仏像で表現できないか?というのがドローン仏の発想の原点です。

仏像を宙に浮かす表現は1,000年以上前から仏師たちが色々挑戦してきました。仏像を御堂の壁の高いところに貼り付けたり、欄間に彫ったり、雲の彫刻の上に載せたり、天井から吊るしたり。現代の技術と組み合わせたら本当に宙に浮かせられるのではと思い選択したのがドローンでした。

試作品の開発
試行錯誤

ドローン仏は屋外ではなくお寺の本堂で飛ばしたいと思っていました。何故ならお寺の内陣は浄土、外陣は衆生の世界を表しているからです。そのためドローンは小型のトイドローン(DJI Tello)を選択しました。しかし、トイドローンには重いものを載せられません。

次の課題となったのは仏像の軽量化です。解決策として私が木で彫った仏像を3Dスキャンし、体内を空洞化して軽量化した上で3Dプリントした仏像を作成しました。これによりトイドローンに載せても飛ぶことができる超軽量の仏像ができました。

ドローン仏
デビュー

浄土宗龍岸寺池口隆法住職に私がなぜドローン仏を作ったのかという意義を汲み取っていただき、2018年のお寺の法要で阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩三体のドローン仏来迎を試み成功。それがSNSで話題となり各メディアに注目されました。

ドローン仏
の進化

トイドローンの一番の難点は複数台をコントローラーで飛ばすと電波干渉を起こしやすく、最大3台までしか飛ばすことができないことでした。そこでドローンをTelloからDJI Mini2に変更。これによって電波干渉も起きにくくなり飛行も安定し、さらにドローンの大型に伴ってより大きい3D仏像を載せられるようになりました。

また、紫雲の表現には発泡スチロールを雲型に彫り、その表面に和紙を貼り彩色を施しました。また3D仏像の表面には金箔を押すことによって本物の仏像と変わらぬ輝きを得ました。2021年の龍岸寺シン・ドローン仏来迎法要ではドローン5台に合計7体のドローン仏をのせて来迎させることに成功しました。

今後の展望

最終目標は、阿弥陀二十五菩薩来迎を再現するため合計26体のドローン仏を来迎させることです。これだけ大量のドローンを飛ばすとなるとプログラミングによる編隊飛行が必須となります。今後はプログラム制御されたドローン仏来迎の完成を目指します。

ドローン仏
の先へ

ドローンに仏像を載せたいのではなく、来迎を立体的に表現したい。仏像とは仏教世界を視覚的に表現するものであり、各時代その時代の最先端な技術が取り入れられて作られてきました。現代であれば機械技術を取りいれるのも自然の流れと言えます。

土御門仏所では、受け継がれてきた伝統的技法を用いた手作業による仏像彫刻、仏像修復を基本に据えながら、新たな挑戦として現代技術を取り入れた仏像を提案していきたいと思っています。